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鼈の独り言(妄想編)

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初代剣埼 ~浦風型駆逐艦に搭載されなかったディーゼル機関のその後~

 以前このブログでは「浦風型駆逐艦」を取り上げた。浦風型駆逐艦はディーゼル機関を搭載予定していたが、第一次大戦の勃発によりドイツから部品の調達が出来ずディーゼル機関搭載を断念した経緯を書いたのだが、実はこのディーゼル機関には後日談があり別の艦の運命にも深く関わっている。今回はそのディーゼル機関と関わった艦「初代剣崎」を考察したい。

 第一次大戦の勃発により浦風型がディーゼル機関搭載を取りやめた後もドイツ側では発注に基づいた製品の製作を行っており、完成したディーゼル機関を律儀にも中立国を通じて日本に送ってきていたのである。すでに浦風はタービン機関を搭載して完成しており機関の日本到着時には搭載は不可能な状態だった。日本海軍は考慮の末このディーゼル機関を搭載する別の艦艇の建造を行うことになったのである。

 当時日本海軍の保有するタンカーは「志自岐」一隻だけだった。海外からの輸入は民間のタンカーを徴用して賄うことができるが、軍港間の輸送を行う比較的小型のタンカーを保有しておらず、海軍は浦風型の余剰ディーゼル機関を再利用する形で大正六年に小型タンカーを一隻建造する。これが初代剣崎である。
 初代剣崎は排水量1970トン、速力11ノットの小型タンカーであったが、こうした小型タンカーを持っていなかった海軍に便利がられ、瀬戸内海の各根拠地の重油輸送に用いられることになった。また目立たないが日本海軍初のディーゼル機関搭載艦艇であった。

 しかし日本海軍はディーゼル機関の扱いが不得手であり、またディーゼル機関そのものが開発から年月が経っておらず機械的信頼性に乏しいこともあり昭和に入ると呉軍港内に係留したまま放置されるようになる。そして昭和八年9月1日に剣埼は除籍となってしまい、海軍初のディーゼル機関搭載艦は海軍籍を離れるのである。まもなく「剣崎」の名称は別の新造艦艇に引き継がれる。この艦艇はその後数回の遍歴を重ね、軽空母「祥鳳」として太平洋戦争で戦没することになる。

 一方、除籍された初代「剣崎」も船としての生涯を終えた訳ではなかった。船体自体はまだ十分使用できる状態であった初代剣崎は農林省に移管され機関の換装という大改造を施した上で漁業取締兼指導船「快鳳丸」として再就役することになる。快鳳丸は主に北方の漁業取り締まりを行っていたが、太平洋戦争勃発後は農林省に籍を置いたまま海軍に徴用され幌筵を根拠地とした第五艦隊付属の哨戒兼気象観測船として用いられる。さらに昭和二十年になると艦艇が不足した海軍は快鳳丸を特設砲艦とし、12年ぶりに日本海軍艦艇に復帰することになる。すでに二代目剣崎・祥鳳は三年前に珊瑚海海戦で戦没していた。そして初代剣崎・快鳳丸も昭和二〇年4月19日に北海道日高沿岸を航行中に米潜水艦の雷撃により沈没する。剣崎として完成してから29年の生涯であった。

 初代剣崎建造の直接の原因となったのはディーゼル機関であるが、その初代剣崎、そして二代目剣崎も悩まされたのがディーゼル機関の不調であった。結局両者とも機関換装という大工事を行っているのは奇妙な偶然と言えるかもしれない。
by narutyan9801 | 2013-10-23 11:31 | 妄想(軍事) | Comments(0)