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鼈の独り言(妄想編)

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ヴォイニッチ手稿 ~未だ解読不能な謎の奇書~

 人類が直接言葉を交わせない相手に情報を伝える手段、文字を発明したのは約8000年前と言われている。そして文字の誕生とほぼ同じ時期には特定の人以外に情報が伝わらないようにするための手段「暗号」も出来ていただろう。暗号は文字に条件付けを行い情報を分からなくするものであるがあまりに複雑だと解読に時間がかかったり間違った解読を行ってしまう可能性が増えるため一定の条件を付加する場合がほとんどである。しかし何度も暗号を使用していると確率統計的手法により暗号が解読されてしまうことになる。現在ではコンピューターの解析なども使われ極端に使用頻度の低いもの以外の暗号は時間をかければほぼ解読が可能となっている。しかし何事にも例外は存在し現在の暗号解読技術をもってしても解読できない奇書も存在する。今回はそんな奇書の中でもとりわけ謎めいている「ヴォイニッチ手稿」を考察したい。

 ヴォイニッチ手稿は1912年にアメリカ在住の古書商ヴォイニッチが現在のグレゴリアン大学の前身コレジオ・ロマーノが売却した古書の中から発見したとなっているがこの手稿の存在はそれ以前にいくつかの記録が残されている。確実な最古の記録はプラハに住んでいた錬金術師ゲオルク・バレシュが1639年にローマに在住していた学者アタナシウス・キルヒャーに宛てた手紙の中にこの手稿を入手したことが記されている。バレシュの死後友人の手を経て手稿はキルヒャーが所有することになった。入手の際この手稿がかって神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ2世(1552~1612)が600ダカット(現在の価値で約10万ドル)で手稿を購入したと書かれたメモが付随され後にヴォイニッチが再発見した際このメモも見つかっている。エジプトの古代文字ヒエログリフの研究なども行っていたキルヒャーは自身がこの手稿の解読を試みようしたが解読は失敗に終わったようでありキルヒャーの死後ヴォイニッチ手稿は他の蔵書と共にコレジオ・ロマーノに収蔵されたらしい。その後1912年にコレジオ・ロマーノが財政難に陥り蔵書の一部を売却、その中にヴォイニッチ手稿が含まれていたのである。再発見者のヴォイニッチは同書をアメリカに持ち込み亡くなるまで彼が所有していた。1930年にヴォイニッチが亡くなると同書はまた幾人かの手を経た後1969年にイェール大学に寄贈され、現在に至っているのである。

 ヴォイニッチ手稿は大きさは23.5cm×16.2cm×5cmで現在のA5サイズよりも若干小さい。一部が失われているが現存する部分の厚さは5cm、ページ数は約240ページで上質な羊皮紙で作られている。土台となっている羊皮紙であるが2011年にアリゾナ大学で行われた放射性炭素年代測定法により1404~1438頃に作成されたものであることが判明しているが手稿自体の作成時期は羊皮紙の製造よりも時代が下がる可能性はある。
 ヴォイニッチ手稿に記載された文字数は残っている部分で約17万文字であり多くのページに挿絵が描かれている。挿絵の種類から生物学、占星術、薬学、薬草、処方の五つの分野に区分されるのではないかと思われている。
 文字、または記号と思われるものはでたらめに配置されているわけではなく何らかの意味を持つ文章の配列になっていると推察されており様々な手法で解読が試みられているが未だに記載された内容は不明である。

 ヴォイニッチ手稿が再発見された時期は第一次世界大戦の直前で国家間の諜報活動が活発化した時期であり暗号の解読方法も日々発達を遂げていた。第二次世界大戦後成熟した暗号解読法を用いてヴォイニッチ手稿の解読が幾度か試みられている、代表的なのが暗号の天才と呼ばれたウィリアム・フリードマンによる解読であるが彼をもってしてもヴォイニッチ手稿に記載された内容は解読できなかった。解読には失敗したもののフリードマンはヴォイニッチ手稿の記述は民族や国家と言ったマクロな単位で時間をかけて発達した自然言語ではなく個人や団体といったミクロな単位の中で短時間で考案された人工言語ではないかと推察している。
 暗号解読とは別の手法で挿絵等からヒントを得て単語の意味を解読し個々の単語の意味をつなぎ合わせて文章の内容を解読しようという試みもなされている。例えるなら杉田玄白らの「ターヘル・アナトミア」の翻訳で「鼻」の項目に記載された「フルヘッヘンド」という単語を「盛り上がった」と推察したような解析(このフルヘッヘンドの話は実際は別の単語だったという説もある)である。しかし正体が特定しやすいと考えられた植物の挿絵は実際に存在する植物ではなく架空のものが描かれており単語の特定に結びつけられるものはなかった。そしてもう一つ特定しやすい要素である人物画も全裸かつ抽象的な画法で装飾品や身体的特徴から民族を特定できずこの手法での解読も失敗している。
 現在注目されている解読法は知られている言語の文法パターンとヴォイニッチ手稿の文法パターンを比べ元になる言語を特定しそこから翻訳を進めるという手法である。現在コーカサス語、セム語、ラテン語、古トルコ語などの候補があり実際にある程度翻訳が進んでいるというものもあるが元になる言語が確定しない限り推察の域を超えないものである。

 様々な解読が試みられている中でヴォイニッチ手稿の内容は実は全く意味をなさないものでないかという説も根強い。前述したとおりヴォイニッチ手稿は神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ2世が大枚を叩いて購入したという記述も有り代々の所有者も大金を出して購入したと思われ詐欺を行うための贋物して十分な魅力を持っている。もしも手稿を詐欺の餌として使うならばなまじ意味が通る内容よりも意味がありそうで実は無意味な偽書としたほうが何かと好都合であろう。高価な羊皮紙や顔料も偽書に付加価値を与えるには効果的であるかもしれない。しかし万が一ヴォイニッチ手稿が偽書であった場合、この奇書は高価な落書きということになってしまうのである。

 現在ヴォイニッチ手稿は所有者であるイェール大学がインターネット上で公開しネットを介して誰でも閲覧することができる。数百年前の不老不死や錬金術の秘法を記したと思われている奇書は現在全世界の人々の目に晒されつつもその秘密を守り続けているのである。

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 現在ヴォイニッチ手稿はインターネット環境があれば複数のサイトで現存しているすべての記載が閲覧できる。希代の奇書を眺めてみるのも一興だろう。

by narutyan9801 | 2019-05-02 11:58 | 妄想(オカルト) | Comments(0)