鼈の独り言(妄想編)

suppon99.exblog.jp
ブログトップ

シガテラ ~捕食魚すべてが毒魚になるかもしれない毒~

 いわゆる「有毒生物」と言われる生物が「毒」を得る方法は大きく分けると二つの方法がある。一つは消化酵素などから自ら毒を作り出す方法である。毒グモや毒蛇と呼ばれる動物がこれに該当する。もう一つが他の生物が作り出す毒を利用する生物である。これには先日書いた「テトロドトキシン」を利用するフグ類やある種のアリから毒を得て利用しているといわれるヤドクガエルなどが該当する。この類の生物は他の生物の毒を食物連鎖の過程での「生物濃縮」によって取り込むことが多い。フグ類やヤドクガエルは毒を「積極的に利用するため」捕食者は警戒することになるが、自然界に存在する毒の中には生物濃縮により「捕食者がいつの間にか毒を蓄積し、食中毒を起こしてしまう」という種のものがある。今回は自然界での生物濃縮毒の一つ、「シガテラ」について考察したい。

 「シガテラ」とは熱帯地方に生息する植物プランクトンが生成する毒素である。特に渦鞭毛藻類の仲間が多く分泌するが、他のプランクトンの毒もあり一般的には複数の植物プランクトンの毒素が混じり合っているものである。「シガテラ」の語原はキューバに移住したスペイン人が現地で「シガ」と呼ばれていた貝を食べて食中毒を起こしたことから名付けられたという説がある。
 シガテラによる食中毒の特徴は食中毒の原因となる食べ物が特定できないところにある。海水中にある植物プランクトンは動物プランクトンに食べられ、その動物プランクトンを小魚が食べ…という属目連鎖の過程で捕食者に蓄積していくため海水中の捕食者であればシガテラの影響を受けている可能性がある。また植物プランクトンの生息密度は濃淡があるため、ある地点では無毒の魚が別の地点では有毒魚になっていることもあり、食中毒の原因を特定するのは非常に困難であった。中世から知られていたシガテラ中毒の原因が植物性プランクトンによるものであると分かったのは1970年代になってからである。

 シガテラ中毒を起こす原因物質は現在20種類以上が知られている。これらの物質が複合的に作用することになるが、主な作用は神経伝達の阻害である。中毒を起こした患者は消化器官の不調やめまい、頭痛などの神経症状、重篤な場合には血圧の異常降下、神経伝達の異常(特に冷たさに対する異常反応)などを起こす。ただ、現在までに日本で起こった中毒事件での死亡例は無いと思われる(熱帯地方では死亡例も報告されている)

 ただ今後、地球温暖化による海水温上昇の影響で日本での発生件数増加の可能性が高まっている。日本での発生は1980年代までは沖縄県での発生例しか知られていなかったが、1990年代には宮崎県、千葉県など黒潮が通る沿岸地域での発生が報告されている。シガテラの怖い点は発生する魚種が特定できない点である。千葉県の発生例では発生源となった魚はイシガキダイであった。イシガキダイは商業的な漁獲は少ないが磯釣りの人気魚でありなかなか旨い魚である。普段食中毒の発生源と考えられない魚が毒に犯されているという事は考えてみると恐ろしいことである。シガテラの簡易的な検査器具はすでに販売されているが、現状の対策としては漁協などで出す注意情報などを参考にするしかないと言える。
 毒を積極的に利用する生物は大抵派手な「警戒色」を持っているものである。まったく毒を感じさせないところに毒がある。シガテラとはそんな不気味な雰囲気を持った異質な毒である。

e0287838_8444692.jpg

 オニカマス。英名のバラクーダの方がよく知られている。ゲームフィッシュとして知られるこの魚は日本で唯一シガテラ中毒の危険性のため食用が禁止されている魚である。
[PR]
by narutyan9801 | 2013-10-08 08:51 | 妄想(その他) | Comments(0)