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鼈の独り言(妄想編)

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ベニクラゲ ~若返りをする驚異のクラゲ~

 「不老不死」は古代より多くの人間が追い求めてきた欲求といえる。秦の始皇帝をはじめ多くの権力者が「不老不死の秘薬」を求めてきた。現在の医学、及び生物学では「多細胞生物」の細胞は染色体端末(テロメア)の分裂限界があり、ある程度の細胞分裂を行った後は分裂が停止してしまうことが分かっており「不老不死」は実現不可能とされている。しかし生物の中にはその原則を破り、老化した個体が幼体期に退行し再び成長を繰り返すという「不老不死」を獲得したものも存在する。今回はその生物「ベニクラゲ」を考察したい。

 ベニクラゲは世界中の熱帯、温帯の海に生息する直径4、5mmの小さなクラゲである。体は透明で内蔵が透けて見え、内蔵の色が紅色に見えるために名付けられたクラゲである。
 多くの小型クラゲに共通する生態であるが、卵から孵化したベニクラゲは水底の岩などに着生し「プラヌラ幼生」と呼ばれる時期を過ごす。プラヌラ幼生はイソギンチャクや、熱帯魚を飼ったことがある方なら「ヒドラ」を連想してもらうと分かりやすいと思う。プラヌラ幼生が二日ほど成長すると先端が幼クラゲとなって水中生活に入り、20日ほどで成体クラゲになるという生活史をおくっている。

 ここまでは普通のクラゲと同じであるが、ベニクラゲは成体からポリフに「若返り」をし再び幼クラゲから成体へ成長することができる。触手を体内に吸収し傘を反転させ水底に着床した「元」成体クラゲは再び「プラヌラ幼生」となりまた同じ成長過程を繰り返すのである。正確に言えば老体となったクラゲが幼生に「若返り」を行うので不老不死とは性質が違うかもしれない。

 この生態の発見はある偶然と「ぐうたら」によるものである。とある大学の研究室でベニクラゲの研究が行われていたのであるが、その世話をしていた学生が世話を怠り、クラゲの飼育装置は長期間放置されていたのである。全滅したろうと思われていたベニクラゲは触手の本数が少ない若い状態で発見され、研究の結果若返りが判明したとのことである。
 
 ベニクラゲは前述したように世界中に分布するが、この生態を持つクラゲは1991年に地中海産のベニクラゲで発見されている。その後世界各地のベニクラゲがこの現象を持つか観察が行われ、21世紀に入ってから日本の鹿児島湾で採集されたベニクラゲもこの能力を持つことが発見されている。現在のところ若返り能力を持つベニクラゲはこの二カ所でしか見つかっていない。

 この二カ所で採集された個体がただ漫然と老化したら幼体に戻って人生(クラゲ生?)をやり直しているというとどうもそうではないらしい。外傷を負って成長が困難になったとか、餌の不足で成長が望めない状態で初めて「若返りのスイッチ」が入りポリプに戻ることができるようである。後に「若返り能力」は「ヤワラクラゲ」というクラゲでも持つことが分かったが、ヤワラクラゲは成熟前の若い段階でしか若返ることができないようで、成熟個体が若返られるのは現在のところベニクラゲだけのようである。 

 ベニクラゲの若返り能力は果たして無限なのか、有限なのか、現在その研究が進んでいる。京都大学の久保田信准教授の研究では10回の若返りを成功させたが、残念ながらクラゲ以外のトラブルで記録は止まってしまっている。再チャレンジされるとのことなので管理者も非常に興味を持ってHPを見させていただいている。
 また若返りができるベニクラゲと他のベニクラゲとの違いが見いだせれば、他の動物の細胞にも応用できる可能性がある。またベニクラゲはポリプへの退化段階で体の細胞を新たな組織に対応する細胞に作り替えていると見られるが、これは自力でiPS細胞を作っているということになる。ベニクラゲは本当に小さな動物であるが、無限の可能性が詰まっている偉大な動物と言えよう

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               成熟したベニクラゲ。この後産地・条件によっては若返りを行う
by narutyan9801 | 2013-07-01 12:00 | 妄想(生物) | Comments(0)