鼈の独り言(妄想編)

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オンセンクマムシ ~発見者以外誰も見ていない謎のクマムシ~

 「宇宙でも生存できる動物」としてよく名前が挙がる「クマムシ」その種類は全世界で約800種と言われている。様々な環境に生息するクマムシだが、この中でただ一種、日本の温泉から採集され、記載されたクマムシがいる。しかしそのクマムシは発見者しかその姿を見ておらず、様々な疑惑がもたれている。今回はその「オンセンクマムシ」を考察したい。

 オンセンクマムシは1937年、スイス人のラウムによって記載されたクマムシで、日本の雲仙の温泉湯垢内から採集されたとなっている。その形状は他の様々なクマムシの特徴を兼ね備え、さらに既知のクマムシには見られなかった三角形の突起が背中についていたと記録されている。ラウムは新たに「中クマムシ目」を創設させて記載を行っている。現在中クマムシ目は「中クマムシ綱」に格上げされ、オンセンクマムシは中クマムシ綱に分類されているただ一つの種となっている。
 このクマムシは温泉に生息するという特性が生物学的にみても珍しく、多くの学者が採集すべく雲仙に赴いているが、発見者のラウム以外は誰も発見することができなかった。その後発見地とされる温泉は枯れてしまい、その存在を証明する手がかりは消えてしまっている。さらに様々な状況から、オンセンクマムシの発見自体が疑わしいことが分かってきている。

 発見者のラウムは元々線虫の研究者でクマムシ研究に関しては専門分野外の人物であった。彼は十数年に渡り専門の線虫研究と平行してクマムシの論文も発表している。この間8種類のクマムシの発見を報告しているが、現在まで有効な種類はそのうちオンセンクマムシを含む3種類にとどまっている。現在も有効とされている種類もオンセンクマムシ以外の二種は南米や南極周辺で別の研究者が採集した種を彼はヨーロッパで採集したと主張し記載されたもので実在は疑問視されている。そしてオンセンクマムシに関しても彼以外は実物を発見できず、標本も残っていないので実在を証明できる決定的な証拠は無いと言ってよい。

 どうもラウムという人物は風変わりな人物であったらしく、オンセンクマムシの発表に関してもほぼ同時期に日本とドイツの学術誌に記載するということを行っている。学術論文の発表の形式ではこれはかなり「常識外れ」の行動なのだそうである。さらに日本で発表した論文では同時期に東アジアで活動していたクマムシ研究家を罵るような内容の記述を行っており(ただし罵られた研究家のクマムシ同定能力は相当低く、彼が発見したクマムシはその後すべて存在が確認されていない)、この論文の作成に関してはどうも感情的に均衡を保ち得ない心情であったようである。そのような状況でオンセンクマムシの実在は疑問視され、捏造すら疑われるようになっていた。

 ところが、1978年にイタリアで小川に棲むクマムシの新しい種が発見され、そのクマムシの背部にオンセンクマムシと同じ三角形の突起物があることが1986年に指摘され、オンセンクマムシの存在が架空のものではない可能性が出てきたのである。ラウムの発表から約60年後の新たな展開であった。

 こうしてオンセンクマムシの存在に光明が指してきたが、肝心の温泉は枯れており、さらに雲仙普賢岳の火山活動により広域的な調査ができない状況で、オンセンクマムシの調査は進んでいない状況である。

 オンセンクマムシの一番の特徴である背中の突起は何であろうか。専門外がこんなことを言うのは筋違いかもしれないが、イタリアのクマムシとオンセンクマムシの生息域が水の流れがある所である。とするとこれは水に流されないようにする一種の整流板の役割をしているのではないだろうか?と勝手に想像してしまう。いずれにしても肝心の「オンセンクマムシ」が再発見できなければなにも分からないのである。現地での調査が進むことを期待したい。
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by narutyan9801 | 2013-05-27 12:18 | 妄想(生物) | Comments(0)