鼈の独り言(妄想編)

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アルシノイテリウム ~宮殿側で見つかった謎多き巨獣~

 20世紀初め、エジプトのプトレマイオス朝の遺跡の近くからサイに似た動物のほぼ全身化石が発掘された。当初はサイの仲間と考えられていたこの動物は調査の結果現在では絶滅してしまった系統の動物であることが判明する。今回は謎の多いこの動物「アルシノイテリウム」を考察したい。

 アルシノイテリウムを日本語に訳すると「アルシノエの獣」となる。アルシノイという言葉は実は人の名前で、プトレマイオス王朝の女王「アルシノエⅡ世」の宮殿のそばで初めて化石が発掘されたために名付けられたためである。この化石は全身の骨格がほぼ完全にそろった化石で、状況からかなり若い個体の様である。何らかの事故に巻き込まれて土砂に埋まり、そのまま化石になった可能性が高い。
 アルシノイテリウムの特徴はなんといっても頭部の角である。現世のサイの角は実は「毛の固まり」であり、骨は無いので死んでしまうと腐敗してしまい、化石としては残らない。これに対してアルシノイテリウムの角は頭蓋骨そのものが隆起して角を形成しており、化石となって残ったのである。視覚的には相当重量感があるが、実際には骨の中は空洞で見た目よりは軽いものであった。

 アルシノイテリウムは外見上はサイに似ているが、分類上はかなりかけ離れている。現世のサイの仲間は分類では奇蹄類に属し、大ざっぱに言えば馬の仲間であり、その期限はヨーロッパとアジア大陸が分離する前のローラシア大陸で誕生したほ乳類である。それに対してアルシノイテリウムはアフリカ大陸で誕生したほ乳類(アフリカ獣上目)で、近蹄類と呼ばれる類に分類される重脚目という目に属する。近蹄類には長鼻目(象の仲間)や海牛目(ジュゴンの仲間)などが含まれ、アルシノイテリウムはこれらに近い動物ではあるが、相当古くに分化したらしい。

 アルシノイテリウムは最初に発見された完全骨格の化石個体以外に近年まで化石の発見例がなく、その分布はアフリカ大陸の一部のごく狭い地域に限られていると考えられてきたが、近年ではアフリカ東部や中東でも断片的ながら化石が発見され相当広範囲に生息域をもっていた動物であることが判明している。生態は現在のサイが主に草原を生息場所に選ぶのに対し、アシシノイテリウムは湿地帯やマングローブ帯などの湿潤な地域を好んだらしい。大きな体と角を考えるといささか不釣り合いな生息環境であるが、他の動物との棲み分けがあったのかもしれない。

 アルシノイテリウムは当時まださほど大きい動物ではなかったゾウを圧する体格を誇っていたが、その生息期は動物史としては短く約2300年前には絶滅している。原因としては地球環境の寒冷化・乾燥化が進み生息地域が無くなったためと言われているが、正確なところは不明である。実のところアルシノイテリウムがどんな動物から進化したのかはその中間となる動物化石が発見されていないためほどんど分かっておらず、系統を残さず滅んでしまっている。今のところアルシノエⅡ世神殿遺跡のそばから掘り出された完全な骨格化石以外は断片的な化石しかなく、本当に謎だらけの動物なのである。今後研究が進んで、彼らの謎が解明されてゆくことを期待したい。

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アルシノイテリウムの全身骨格化石。ほぼ全身の骨格が揃った化石は現在の所唯一の化石である。
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by narutyan9801 | 2013-05-24 10:04 | 妄想(生物) | Comments(0)