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鼈の独り言(妄想編)

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メアリー・アニング ~海洋大型爬虫類化石発見のパイオニアは少女~

 中生代、陸上では恐竜が闊歩していた時代に海洋でも大型爬虫類が生息していた。海洋に住んでいた大型爬虫類は恐竜に先んじて化石が発見され、研究が行われている。これら海棲爬虫類の化石を最初に発見したのは12歳の少女だった。今回は海棲爬虫類化石発見で大きな足跡を残した「メアリー・アニング」を考察したい。

 メアリー・アニングは1799年5月21日、イギリス、ドーセット州ライム・リージス村で生まれている。生家は貧しく彼女の父は家具職人の傍ら、化石を採集して観光客に売る副業をしていた。彼女が11歳の時に父親が結核で亡くなると、兄と共に化石の採集、販売を引き継ぐことになる。最初は観光客相手の商売であったが、研究目的に化石を高く買い取ってくれる研究者との取引をするうちに、次第に彼女は化石採集のコツを掴んでゆく。

 彼女の最初の発見は父の死から数ヶ月後であった。一年前彼女の兄がワニに似た動物の頭の骨を発見した地層を嵐の後に訪ねてみると、嵐によって削られた地層から頭骨の主の者と思われる骨が露出しているのを発見する。これが後に「イクチオサウルス」と呼ばれる魚竜の発見であった。
 この骨の発見でメアリーの評判が高まると、彼女の化石採集の能力に目を付けた他の化石採集者が彼女に財政援助を行い、メアリーは家計に左右されることなく化石採集に没頭できるようになる。そしてイクチオサウルスの発見から10年後、彼女は「首長竜」の化石を発見する。こうして二度の巨大海棲爬虫類を発見したメアリーはその後も発掘を続け、イギリスで最初の翼竜の化石を発見するなど、著名な化石ハンターとなってゆくのである。

 メアリーの発見には幸運な要素も確かにある。最初に恐竜「イグアノドン」を発見したギオテン・マンテルはなかなか化石が爬虫類のものと認められず苦労しているが、メアリーの場合は幸運にも全身骨格の状態で発見されたので、分類もすんなりと進んだようである。これはメアリーの住んでいたライム・リージス村付近の地層がジュラ紀にはおそらく酸素の少ない海底だったのだろうと思われる。海底に沈んだ動物の遺体は酸素がほとんど無く分解者もほとんど居ない海底で堆積物に埋まり、全身の骨格が残るという好条件で化石になったと思われる。陸上では大型の腐肉食動物によってバラバラにされ、相当な幸運がないと全身骨格は残らない場合が多い。
 ただ、そうはいってもメアリーの化石発見能力はやはり優れていたと言わざるを得ない。彼女は47歳で亡くなっているが、その生涯で多くの化石を発見している。単純に幸運に恵まれていただけでは無い、おそらく化石発見の経験を積むことによって地層の位置などから化石がある場所を読み取れるようになったのではないだろうか。
 また彼女は分類学者とも比較的良好な関係を持っている。前述のマンテルは分類学者との確執が尾を引き、特にイギリスの分類学者の重鎮、リチャード・オーウェンとの対立は有名であるが、メアリーは生涯の後半にはロンドン地質協会から名誉会員に推されている。これは自分の想像なのであるが、彼女は化石採集が心底「楽しかった」のではなかったかと思う。学問的な興味ももちろんあったのだろうが、古代に生息していた巨大な動物が眠っている。それがどんな姿をしていたか見てみたい。そんな好奇心が彼女を化石採集に駆り立てていた。そんな感じがするのである。
by narutyan9801 | 2013-04-22 09:45 | 妄想(人物)