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鼈の独り言(妄想編)

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夫婦添い遂げる虫 シロアリ

 世間ではバレンタインデーも過ぎ、ホワイトデーまで恋のお話は小休止といったところだろうが、この間隙を突いてある昆虫の深く、そして不思議な恋物語を考えたい。

 通常、昆虫の生殖行為は複数回行われることは少ない。多くの昆虫の雄にとって生殖行為は一回だけ、それも選ばれた雄だけに許されることであり、それだけに昆虫の雄は縄張りを持ったり、カラフルな色を纏ったり、力比べをして雌を獲得しようと文字通り命を張ることになる。
 それでは雌の場合はどうかと見てみると、やはり多くの雌も生殖行為に関しては複数回行う種類は少ない。特に単独で生活し社会制を持たない昆虫はほとんどが一回の産卵で生涯を終えてしまい、複数の交尾、産卵を行う昆虫はごく少数である。
 ところで昆虫の中には高度な社会制を持つものも知られている、蟻や蜂では女王を中心とした社会制をもって生活している。これらの昆虫の女王は通常の個体よりも長生きであるが、生殖行為の機会に関してはやはり結婚飛行の際の一度きり(複数の雄との交尾を行うことはある)である。その時交尾で得た雄の精子を、女王は体内に保存し、それを使って産卵を行ってゆく。この精子の保存は高性能で、女王の寿命までは精子の受精能力を保存でき、これによりグループのメンバー供給は女王が健在ならば問題にならないことが多い。

 ところで、高度な社会制を持つ昆虫は蟻や蜂だけではない。それよりも古い時代に誕生した種類でも社会制を持つ昆虫が存在する「シロアリ」である。シロアリは昆虫の系統でもっとも古い「ゴキブリ」に近い昆虫である。実際家の中に入ってくるゴキブリは全体からみるとごく少数派で多くのゴキブリは未だにシロアリと同じく朽ち木や落ち葉を食べて生活している。そしてゴキブリの中でもヨロイモグラゴキブリなどは巣穴を掘り、その中で卵を生み孵った幼虫に餌を運ぶなど、家族単位の社会制を持つことが知られている。こうしたゴキブリの習性を引き継ぎ発展していったのがシロアリであるとも言える。

 ところが、蟻や蜂が発達させた「精子の保存機能」をシロアリは発達させることができなかった。というより発達させなかった。シロアリが取った戦術は「雄も長生きすればいいじゃん」ということ、つまり、シロアリは雄の王アリと雌の女王アリが頂点に君臨する社会を構築させた社会制昆虫なのである。

 この「王アリと女王アリ」の夫婦制をシロアリが選んだのは「精子の保存機能」が発達できなかっただけではない可能性もある。シロアリは外部からの感染に非常に弱く、お互いがグルーミングしあって唾液の殺菌力により感染を防いでいる。シロアリを単独で飼育しても感染を防げず程なく死んでしまうほどである。「ウサギは独りぼっちにすると寂しくて死ぬ」と言われているがこれは迷信、しかし「シロアリは独りぼっちにすると感染症で死ぬ」は事実である。結婚飛行でペアを組んだシロアリの若き王と女王は小さな巣穴を作り、そこでお互いをグルーミングしつつ卵を生み育てるのである。生まれた子供がやがて夫婦の餌やグルーミングを果たすようになり、巣が安定してくるとシロアリの王や女王は生殖に専念するようになる。

 シロアリが蟻や蜂の社会制と違うのはもう一点、王や女王が寿命やアクシデントで死んでしまったとき、それに変わる副王や副女王が存在し、バックアップできるシステムが存在することである。蟻や蜂の社会制では女王にもしものことがあればそのファミリーは社会制を保てず散り散りになってしまう。ミツバチなどでは新女王が群の何割かを引き継ぐ「巣別れ」などで社会制を維持するが、順調な場合でありアクシデントに対処することはできない。人を死に至らしめることもあるオオスズメバチにしても、女王の寿命が尽きてしまえばそのファミリーは霧散し、社会システムを次代に引き継ぐことはできない。この「システムを次代に引き継ぐ」というものでおもしろいお話を最後に一つ。

 日本にすむヤマトシロアリを研究すると、王アリと女王アリの寿命に差があることが分かってきた。王アリが20~30年も生きるのに対し、女王アリの寿命は7~8年という。女王は自分の死後王アリとファミリーを引き継ぐ新女王を用意するのであるが、これがなんと「未受精の卵から孵った自分のクローン」であるらしい。ヤマトシロアリは単為生殖も可能で、その場合女王アリと同じ遺伝子を持つクローンが新女王となる…。男からみるとちょっと背筋が寒くなるような話であるが、おそらく血族結婚での劣性遺伝子の影響を防ぐ目的があるのではなかろうか?自然の摂理というものは不思議で面白いものである。
by narutyan9801 | 2013-02-25 09:00 | 妄想(生物) | Comments(0)