鼈の独り言(妄想編)

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冥王星 ~分類の変更と発見命名者たちのその後~

 先日の冥王星のお話の続き、後半は冥王星の分類の変化と、関わった人たちのその後のお話など

 1930年2月18日にトンボーにより発見された冥王星ですが、それまでに発見された惑星とは異なった特徴が多く、当初から惑星への分類に疑問を投げかける声もありました。特に既知の惑星が太陽の黄道面に対しほとんど傾かずに公転しているのに対し、冥王星は約17.01度傾いた軌道で公転しているのは際だった特徴でしたが、「最遠の変わった惑星」という解釈で惑星の仲間に入れられ「太陽系第九惑星」となりました。子供の頃「水金地火木土天海冥」と惑星の名前と太陽からの距離を覚えた人も多いでしょう。冥王星は公転の軌道が海王星の内側に入り、一時的に海王星より太陽に近い位置に位置することがあります。最近では1979年から1999年の間、冥王星が海王星の公転軌道の内側に入り「水金地火木土天冥海」となっていました。ちなみにブログ管理者、現在42歳ですが、この文章を打っている現在、人生の半分弱ぐらい冥王星が海王星の軌道の内側に存在したことになります。

 さて、冥王星の発見から約50年後の1978年、冥王星に衛星があることが分かり「カロン」と名付けられます。このカロンの存在が最終的に冥王星を惑星の地位からおろしてしまうことになるのです。

 これからちょっと話がややこしくなるので、簡単に「惑星の定義」を書いておきます。

 惑星は
  1 太陽の周りを回っている
  2 天体自体の自己重力により球体に近い形をしている。
  3 太陽の周りを回る軌道の近くに他の天体が存在しない(自己重力で取り込むか、衛星とするか、軌道周辺から弾きとばしている)

 と定義されています。

 カロンの調査が進むと、冥王星とカロンの関係がそれまでの惑星と衛星の関係を覆す可能性があることが分かってきました。カロンの直径は約1,200Km、冥王星とカロンの質量比は約7:1で、一番の問題は冥王星とカロンの公転の力の中心点が冥王星の外側に位置することでした。惑星と衛星はお互い引っ張り合うことで公転しているのですが、その力が釣り合う地点が惑星の内側にある場合、惑星と衛星と定義されます。これが惑星の外側にでてしまうと惑星と衛星の関係ではなく、連星、または二重惑星となってしまうのではないか?ということになってしまいました。
 冥王星とカロンが連星の関係となると、惑星の定義の3つ目「惑星はその公転軌道にある他の天体を排除した天体である」という定義からは外れてしまいます。しかし惑星の定義は「今までそれからはみ出したものがなかったからこれでいいんでは?」的な決め方でしたから、その定義の意義について論争が起こります。

 カロンが発見されたことで冥王星自体の構成物質も分かってきました。当初冥王星はかなり「重い」星と予想されていたのですが、星を形成するかなりの部分がメタン、窒素、一酸化炭素などの氷で形成されているらしいことが判明しています。冥王星の構成は実は彗星に近いものでした。

 そして観測技術の発達により、冥王星の付近、さらにより遠い所を公転している似たような天体がまだ存在していることも分かってきました。こうした天体が多数存在するのであれば、冥王星は惑星として分類するよりも別なカテゴリーに分類し直すべきではないかとの意見が出されます。冥王星発見者のトンボーはそうした議論が起こってきた1997年に世を去りますが、彼は「冥王星は惑星に分類され続けるべき」と考えていたそうです。

 冥王星をどのように定義するかについて2006年に開催された第26回国際天文学連合総会で議論が交わされました。当初は冥王星に加え冥王星の衛星カロン、火星と木星の間の小惑星帯最大の天体ケレス、21世紀に発見された太陽系外縁天体で冥王星よりやや大きいと見積もられた2003UB313(後にエリスと命名)が惑星と認められ、太陽系惑星が12個になるということが提案されますが、多数の反対意見が出され、ついに8月24日、冥王星は惑星から外され「準惑星」(dwarf planet)に再分類されることになります。この時のニュースは自分も以前管理していた(現在は消滅)ブログに「悲劇」と書いていた記憶があります。

 この「降格」を一番悲しんだのはアメリカの天文学者及び天文ファンでした。冥王星は長く「アメリカ人が発見した唯一の惑星」であり、ある意味誇りでした。冥王星が発見されたその年に誕生したディズニーの「プルート」は冥王星から名前をもらったと言われています。それだけに冥王星の降格は痛恨事だったと言えます。日本でも冥王星の惑星降格は大きな反響を呼び、作品中に多く冥王星を登場させた(宇宙戦艦ヤマトではまだ未発見だった冥王星の月=カロンも登場している)松本零士氏も失望に近い発言をしています。

 一天文ファンに過ぎない自分が冥王星の分類をどうこういうのは分を過ぎていると思いますが、思いを載せておきます。この文の最初の方に載せている「冥王星以外の惑星は太陽の横道面にほぼ水平の軌道で公転している」という一文。この事実は単なる偶然ではないでしょう。これは太陽が形成されたとき、太陽の自転の遠心力で宇宙空間の物質が集まる際遠心力が強く作用する一面が太陽の横道面となり、そこに集まった残存物質が水星から海王星までの各惑星を形成したのだと思います。これからすれば水星から海王星までは太陽の形成が誕生の経緯に繋がったと言え、同じカテゴリーに分類するのは自然ではないでしょうか。

 これに対して冥王星は公転の軌道がかなりずれ、公転も真円からはかなり歪んだ形になっています。これは冥王星が太陽の形成とは別に誕生し、後に太陽の重力に取り込まれて公転するようになったことを示唆しているのではないでしょうか?こう考えると冥王星はやはり惑星は区別すべき天体ということは納得がいきます。ただ、似たような存在のエリス、マケマケ、ハウメアと同類になるのは理解できますが、小惑星帯に存在ずるケレスと軌道や形状の類移点だけで一緒のカテゴリに分類されるのは疑問です。このためにもやはり探査機による調査が必要だと思います。

 実はNASAの探査機ボイジャー1号は木星の観測を終えた後、スイングバイの調整により冥王星へ向かうことも可能でした。しかしNASAは軌道調整が失敗した時や、運用が長期間になるリスクを考え、ボイジャー1号を木星の衛星タイタンへ接近させ、冥王星の接近調査はキャンセルします。もしこの接近調査が行われていたら、様々な観測結果が得られ、惑星問題も早くに決着が付いていたかもしれません。現在ボイジャーの後継機種とも言える「ニュー・ホライズンズ」が冥王星へ向けて航行中です。2015年に冥王星へ接近し観測を行うこの機体には、冥王星の発見者グライト・トンボーの遺灰も乗せられています。もし将来「ニュー・ホライズンズ」が地球外生命体に回収されたとき、その生命体は地球人の死生感について何らかの感想をもつかもしれません。

 最後に、2006年の冥王星の準惑星への定義が決定する直前、冥王星発見・命名に関わった人々で唯一存命していた「Pulto」の命名者ヴェネチア・バーニー・フェアは高まる議論に対し「私は議論に加わることはもう無理、しかし私自身は冥王星は惑星のままであることを望んでいます」と語っています。彼女は冥王星の分類変更の顛末を見届け2009年に亡くなっています。彼女にとっておそらく分類の議論など馬鹿げていたでしょう。人類が一つの星を発見し、それにふさわしい名前をつけれる文化と歴史があったこと、おそらく「Pulto」「冥王星」は人類が存在する限り永遠に使われ続けつでしょう。それだけで十分かもしれません。その一方でやっぱり冥王星をよく知りたいという欲求も人類共通のものだと思います。人間とは本当に欲張りな生き物なのですね。
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by narutyan9801 | 2013-02-20 09:16 | 妄想(天文) | Comments(0)