鼈の独り言(妄想編)

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ロザリア・ロンバルド ~訪れぬ肉親を待ち続ける、永遠に眠ったままの少女~

 人に限らずすべての動物は死亡すると筋肉や内蔵といった軟組織は腐敗し微生物の作用によって分解されてしまう。希に死体が乾燥し腐敗が進行しなかったミイラ化や逆に湿潤状態で死体の脂肪が変質する死蝋化などにより軟組織が残る場合もあるが、外見上はやはり生前の面影を見いだすには難しい状態であることがほとんどである。しかし人類は亡くなった人を偲ぶため、遺体の外見を長期間生前の状態に保つ技術を培ってきた。今回はその技術の集大成ともいえる「ロザリア・ロンバルド」を考察したい。

 ロザリア・ロンバルドは1918年12月13日、イタリア軍の将軍であったマリオ・ロンバルドの娘として誕生しているが満二歳になる直前の1920年12月6日に肺炎で亡くなっている。父マリオの悲しみは深く、彼は娘の姿を留めたいと願い遺体は防腐処理を施されパレルモにあるカプチン・フランシスコ修銅会のカタコンペに安置される。以来現在まで100年近く眠っているような外見を留め続けているのである。

 ロザリアの防腐処理を行ったのはシチリア人のアルフレッド・サラフィアという人物だった。彼の本業は「剥製」の制作であり、その技術を応用したのか、はたまた逆に剥製制作の方に応用したのか「エンバーミング(死体防腐処理)」も行っていた。彼は自分の技術を人に開かすことなく1933年に亡くなっておりロザリアの秘密は長い間謎になっていた。21世紀に入りサラフィアの親族が保管していた資料の中に彼がロザリアのエンバーミングに用いた薬品のリストが発見されたのである。

 サラフィアが用いた薬品は、ホルマリン、亜鉛塩、アルコール、サリチル酸、グリセリンだった。
 ホルマリンは現在も標本作製に使われる防腐効果の高い薬品である。通常ホルマリン標本は溶液内に標本を漬け込むのであるが、ロザリアの場合体内に注入して一定の濃度を保たせ防腐効果を得ている。ホルマリンに含まれるホルムアルデヒドはタンバク質の分解を押さえ、固化させる働きがある。
 エタノールは殺菌作用のほかに皮膚に塗布すると水分蒸発を誘発させる効果がある。ロザリアの皮膚はアルコールにより殺菌と乾燥が行われていることになる。
 グリセリンは逆に保湿効果を保つ作用があり、アルコールにより消毒と水分の蒸発の処理を行った後、保湿と体内に注入された薬剤の対外流出を防ぐフィルターの役割を持っていると思われている。
 サリチル酸は生きた人間にとっては鎮痛剤として用いられるが、強い殺菌作用もあり腐敗菌の繁殖を防ぐ効果があったものと思われる。
 亜鉛塩は細胞を固化させる働きが強い。ホルマリンの固化作用はタンバク質に作用するもので、脂肪は固化されずに腐敗し対外に流出してしまう。それを防いでいるのが亜鉛塩の効能であると言われている。
 処置の最後にロザリアの頬にパラフィンが注入され、幼女らしいふっくらとした頬が再現されている。

 これらの処理と、安置されたカタコンペが地下にあり、一定の温度と湿度が保たれていることによりロザリアは死後もその姿を保っている。しかしエンバーミングには適切なアフターケアも必要で、ほとんど放置状態であるロザリアは少しずつではあるが、外見に変化が生じているようである。

 こうして生前の姿を留めたまま眠り続けるロザリアであるが、死後もその姿を残すように熱望した肉親は数年後にはロザリアの元を訪れなくなってしまう。既に肉親も他界した今、ロザリアは誰を待って眠り続けているのであろうか?

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                  現在もカタコンペで眠り続けるロザリア・ロンバルド
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by narutyan9801 | 2013-08-18 09:50 | 妄想(人物) | Comments(0)